にしき的フォントを更新しました (Version 2.75) 。
内容は以下の通りです:

  • 既存のグリフの修正・調整
  • 漢字を37字追加
  • アラビア゠インド数字を追加
  • Unicode に将来追加予定の、教会スラヴ語文献由来のキリル文字を追加 (Cyrillic Extended-C, U+1C80..1C8F)
  • Unicode に将来追加予定の記号をいくつか追加 (グルジアの通貨ラリの記号など)
  • Unicode に将来追加予定の、オーセージ文字を追加 (Osage, U+104B0..104FF)
  • 私用領域に、「KreativeKorp」のフォントに見られる記号などをまた追加
  • 絵文字を多少追加


アラビア゠インド数字

アラビア゠インド数字 Arabic-Indic digits 【٠١٢٣٤٥٦٧٨٩】はアラビア文字とともに使われる数字です。
アラビア語では一般的にインド数字と呼ばれているようですが、この「インド数字」Indic digits という呼称はときとして我々のいうアラビア数字【0123456789】を指したり*1、あるいはデーヴァナーガリー文字とともに使われる数字【०१२३४५६७८९】を指す場合もあるので、誤解なきよう配慮してか Unicode のコード表では Arabic-Indic digits という呼び名で示されています。
なににせよ、この数字をなんと呼ぶのが最も妥当かについてはしばしば議論になるもののようです。

この数字はあくまでアラビア文字に付随するものですが、 UTR #25: Unicode Support for Mathematics という文書において数学記号として使われることのある文字の例として挙げられているため (実際にどういうところで使われるのかは不明)、アラビア文字を収録していないフォントでも記号としての用途を想定してこの数字だけは収録しているものがあったりします*2
そんなわけで当フォントでもこのたび追加してみた次第です。

また、同じアラビア゠インド数字でもペルシア語などでは一部の数字の形が異なっており、Unicode ではこれを別系統の数字【۰۱۲۳۴۵۶۷۸۹】として符号化しているので、ついでにそちらも収録しています。


オーセージ文字

オーセージ文字 Osage alphabet は、オクラホマ州などに住むネイティヴアメリカンの一民族であるオーセージ族*3の言語、スー語族のオーセージ語を表記するために最近作られたばかりの文字です。

2005年ごろにオーセージ語の最後のネイティヴスピーカーが亡くなり、それと前後してこの言語を保存・再普及するための運動が自治政府の主導で興るなかで提唱された文字で、2006年に初公表されました。のち、2014年には大文字/小文字の区別の導入、一部の文字の廃止や追加といった大幅な改訂が行われています。

なお、オーセージ族の公式サイトから ASCII領域にグリフを割り当てたオーセージ文字のフォントがダウンロードできますが、本記事作成時現在、このフォントは初期の仕様のものになっています。

ラテン文字をもとに作られた文字でありながら、見た目の印象はかなり独特のものとなっています。Unicode にも収録される予定であり、ラテン文字の拡張として扱われかけたりもしていましたが、結局のところオーセージ文字という独立した文字系として解釈するかたちに落ち着いているようです。
当フォントではひとまず N4637 (PDAM 2.1) に示された割り当てに沿って文字を収めています。


私用領域に追加の記号

U+F680..FF あたりに追加したのは、Apple IIc などのコンピューターに搭載されていたという MouseText と呼ばれる特殊文字セットに含まれる記号……というかグラフィック表示用の要素のようなものです。フォント「Fairfax」がこれらを収録していたので、それとコードポイントを合わせる形でおもしろがって追加しました。

また、U+F88C..8F の4つの面妖な記号は「Fairfax」や「Constructium」では U+F84C..4F に収められているもので、INTERCAL という冗談プログラミング言語にて使われる記号らしいです。

*1:参照: http://www.koredeindia.com/hinditext/basichindi002.htm

*2:ちなみに同文書では平仮名の「の」や漢字の「中」も数学記号として用いられうるとしており、どういう分野でどういう趣旨で使われた例があるのか非常に気になるのですが、こちらも調べがつきませんでした

*3:仮名表記は資料によってオセージ族だったりオサージ族だったりもします